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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる16年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

労災認定におけるストレス脆弱性理論

業務に起因してけがや病気を患った場合、労働者災害補償保険法により治療費その他の補償が 行われます。
これは、労働基準法により使用者に対して業務上の疾病に対する補償義務が課せられていることから、それを確実なものとするために、国の管掌により保険制度を作っているからです。
人を一人でも雇った使用者は必ずこの保険制度に加入して保険料を納め、労働者の業務上の疾病に対して備えなければなりません。
近年、業務に起因して精神疾患を患う労働者が増えていますが、私が社労士になった2006年頃は精神疾患については、申請してもなかなか労災と認めてもらえず、請求件数の数パーセントあるかないかぐらいと言われていました。
裁判例なども積み重なってきて、認定基準の見直しが行われた後の平成23年度から令和4年度までを見ると、年々請求件数は増加傾向にあり、令和4年度の請求件数に対する支給件数の割合は26%となっています(精神障害の労災認定に関する専門検討会報告書)。
この度、認定基準にいわゆるカスタマーハラスメントなどが追加され、この報告書についても厚生労働省の広報サイトに資料として公表されています(
参照)。

精神障害に関する労災の認定基準で、裁判の判決などにもよく出てきますが「ストレス脆弱性理論」というものがあります。
前述の報告書にも記載があります。
業務に起因する精神障害は、業務をすることにより精神的に負荷がかかり、それが過大になり精神に異常をきたすと考えられるわけです。
海外出張で責任の重い仕事をさせられた、会社内でパワハラやいじめを受けた、過重労働をさせられたなどの事例がありますが、原因は一つではなく複合的な場合もあり目に見えるけがなどと違いそれが業務に起因するものか、それとも私的に何か原因があるのかなど、認定にあたってはいろいろな要素を総合的に判断するわけです。
それらのストレスについて、少々のことははねのけてしまうような強い精神力の人と、そうではない人とでは、当然受けるダメージの大きさが違ってきます。
その個別のダメージの受ける度合とでもいいましょうか。
ストレスに敏感に反応してしまう人とそうでもない人がいるという考え方で、精神的負荷の度合について判断していくという考え方です。

脆弱性の度合が強ければ、一般的な人が平気な業務上の精神的負荷であっても精神が破綻してしまう場合があるし、業務上の負荷が極端に強ければストレス脆弱性のないような人でも精神に影響を与えてしまうと考えて認定していくという考え方です。
そこで、客観的評価として業務環境の状況について多くの人がどのように受け止めるかということを基準とするということのようです。
認定にあたっては、家庭内の出来事など私的な要因も含めて多くの項目を点数化していきますので、ストレス脆弱性理論がどのぐらいの割合で評価されていくのか、私は不勉強で詳細についてはよくわかりません。

前述の報告書は、ストレスは主観的なものであり個体差が大きいが、仕事に対する要求度が高く、自由度や裁量権が低い、社会的サポートが少ない、などのときに高まるという研究結果があるとしています。
それらを会社内の環境に置き換えると、過度の業務量や責任の押し付けがある、そのわりに決定権の範囲が狭く、上司や同僚が冷たい職場ということになりましょうか。
労災の精神疾患の認定は、なかなか難しそうだと思いました。
自分で書いてて自分でちょっと疲れました。
本日はこの辺でやめておきます。

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