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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

個別的労働関係における労働者

昨日、労働者と取締役の違いについて記事にしましたが、その関係の判例もついでにご紹介したいと思います。


私の手元にある「判例百選」には、パピルス事件(東京地裁判決 平成5.7.23)というのが掲載されています。これは、昨日の話とはどちらかというと逆の例なのですが、自分は労働者なのだから、労働者としての賃金を払えという原告について、労働者としては認められないと、請求が棄却された例です。

原告Aは、コンピューターマニュアルの企画に関する事業をしている会社と月額20万円並びに交通費及び営業活動の実費を支給することを条件にコンピューターシステムのマニュアル作成の営業活動を行うことを内容とする契約を締結しました。


平成2年10月から平成3年2月までは毎月20万円定額が給与名目で支払われていましたが、平成3年3月以降支払がなく、定額給与と交通費、接待費の支払を求めてAが提訴したものです。


裁判所は、契約は雇用契約ではなく業務委託契約と解するとともに、平成3年3月に合意解約されていたとして、Aの請求を棄却しました。


理由としてはいくつかあります。①月額報酬の他に受注があればその他に報酬を出すという約束があった。②Aは必要に応じて出勤を要するとはされていたが、時間管理の拘束を受けていなかった。③会社から具体的な指示命令を受けず、自由に営業活動をしていた。④Aの希望により定額給与から健康保険、厚生年金、雇用保険、及び地方税等の控除がなされていない。⑤源泉徴収税率表の乙欄が適用され、会社が主たる就職先ではないという扱いがなされていた。


以上からAは他の仕事につくことも会社から容認されていたと見ることもでき、Aと会社には使用従属関係があるとはいえず、本件契約は業務委託契約であるというのが、判決です。


①から⑤までの理由をみるとなるほど労働者性はないなあという感じですね。裁量労働制により会社から具体的指示を受けず、時間管理も自分の裁量で仕事を行う労働者もいますが、雇用保険、社会保険等の控除は当然ありますし、他の会社で仕事をしてもいいなんて話には絶対ならないわけですから、Aの主張は棄却されてもやむを得ないということになるでしょう。


産業構造が複雑になるにつれ、労働者性の判断は簡単にはできなくなりました。非正規雇用の増大など、就業形態や雇用形態の多様化も労働者性の判断を難しくしています。この判例のように個別に具体的に検討するというのが、判例の流れです。キーワードは「使用従属性」です。


使用されていて、労働の対償として報酬を得ているかということがポイントです。


その判断基準として先例となる大塚印刷所事件(東京地裁判決昭和48.2.6)では、①仕事の依頼、業務従事に対する諾否の自由の有無、②勤務時間、場所の指定、③業務遂行過程における使用者の指揮監督関係、服務規律の適用、④労務提供の代替性の有無、⑤業務用器具の負担関係、⑥報酬が労働の対償であるか、


などを挙げています。労働の対償とは、生活保障給的要素、欠勤控除、超過勤務手当ての有無、源泉所得税等の源泉徴収の有無、退職金制度などを判断基準としています。


これらの判断基準が先例となり、その後の判例もそのような基準で判断されているようですが、使用従属関係にも強弱の程度があるなどという考え方もあり、なかなか一筋縄ではいかないようです。


〔今日の参考文献〕 別冊ジュリスト労働判例百選№134 P4~5

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