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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる14年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

会社のミスで給料過払い 返還義務はあるのか?

ある労組のメルマガを配信してもらっていますが、そこで実際に相談のあったこととして、標題の件がQ&Aとして載っていました。毎月1万円の過払いを2年間続けていて、24万円を返せと言われたそうです。


答えとして、「民事上の問題であり会社には請求する権利があり、労働者側には返還する義務がある(時効は10年)」


「労働者側に悪意がないので、返還方法や返還額についてよく話し合うこと(分割や減額など)」


「会社が一方的に賃金から控除することはできない」


等が掲載されていました。


それらをもう少し詳しく見てみましょう。

民法では、法律上の根拠もなく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、返還する義務があると規定されています。(703条)


わかりやすい例を挙げれば、泥棒が盗んだ物やお金を返せというのも不当利得返還請求になります。そのような悪意のある(それをわかっていること)受益者は、知らないうちに利益を受けてしまった者と分けて、全額と利息もつけるようにと規定しています。(704条)


この質問者は本人は全然知らない間に会社のミスで過払いになったのですから、703条が適用されます。原則としては全額返還、或いは現物を返還する義務を負うわけです。


「その利益の存する限度」というのが、気になる条文ですが、これについては、「利益が現物のまま、あるいは形を変えて残っている場合をいう、とされています。


判例では、「遊興費に充てた場合は現存利益はないが、生活費に充てた場合は本来支払わねばならないものを免れたとして現存利益あり」としたものがあります。(大審院判決大正5.6.10)


民法を勉強した時、この判例は何だかわかったようなわからない判例だなあと思いました。今だに完璧には理解できてません。


いずれにしても、質問者は正当な理由なく利益を得た者となりますので、返還することは仕方ないと思います。しかし、冒頭で紹介した答えのように、会社側の一方的なミスなのですから、よく話し合い、減額をしてもらうとか、1~2年の分割にして負担のない程度に返還していくようにしてもらうという余地はあると思います。


判例でも、過払い賃金をその後の賃金で相殺する場合には、その時期が合理的に接着した時期に行われ、「あらかじめ労働者にそのことが予告されるとか、その額が多額にわたらないとかであり労働者の経済生活の安定を脅かす恐れのない場合」に許されるとされています。(福島教組事件最高裁判決昭和43.5.28)


労働基準法により給料は全額を労働者本人に支払うのが原則ですから、(24条)会社が本人の了解なく勝手に賃金から差し引くことは違法です。


でも、会社のミスでいつの間にか多額の「負債」を負わされるのは、労働者としてはやりきれないですよね。給料明細をよく見て、前月と変わっていたら原因をきちんと突き止めておくなどの自衛策が必要かもしれません。


〔今日の参考文献〕伊藤真著 債権各論P188~190

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| | 2013年06月20日(Thu)22:34 [EDIT]


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| | 2013年06月20日(Thu)23:06 [EDIT]