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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

賞与は支給日に在籍していないともらえない?

法律を勉強していると「世間一般ではこうなってる」または、「それはまあそれで仕方がないかな」と思っている事柄が、学説や判例では決着がついていないということがよくあります。


法律というのは、どうしても解釈論になってしまって答えが一つとはいかないのですね。


賞与の「支給日在籍要件」というのもその一つです。

大抵の会社は、賞与を支給する日に在籍していることが賞与を支給する条件となっていると思います。就業規則や長い間の職場慣行などでそうなっている場合が多いと思います。


だいたい締切日というのがあり支給日より以前にこの期間からこの期間までについて、この日に支払う、具体例を挙げれば、4月1日から9月30日までの間の勤務状態や会社の業績により、12月10日に支払うという具合です。


上の例の場合、支給日在籍要件がある場合は、10月1日から12月9日までの間に退職した人は本来賞与支払の査定期間に在籍していながら、賞与を受け取ることができないということになります。


さて、判例ではどうなっているでしょうか。


自己都合退職した労働者が「賞与は賃金であり、勤務とともに発生するので在籍により支給が左右されるものではない」と主張した事案(最高裁判決昭和57.10.7大和銀行事件)があります。この会社ではもともと支給日に在籍している人にのみ支給するという慣行がありましたが、それを組合との協議の上、就業規則に明文化したという事情があります。


そのため、労働者側は就業規則の不利益変更についても言及しています。一審(大阪地裁)では、「これまでの慣行を明文化しただけで不利益変更ではない、就業規則により適法」としました。二審もほぼ同じ結論で、最高裁でも「慣行を明文化した就業規則は合理性があり、在籍日支給要件も是認できる」としました。


今日では、就業規則等で支給条件が明確に定められている場合は、賞与は労働の対償としての賃金であるという考え方がされます。そうであるならば「既往の労働部分」に対する賃金として支給日に在籍していなくても支払うべきとする学説もあります。


それに対する反論としては、労働者は退職の日を自分で選べるのだし、将来の勤務に対する期待も含まれている、もともと毎月の賃金とは性質を異にしているもので、労使の合意や就業規則に定められていれば、使用者が支給についての条件をつけることは許されるとします。


後者が有力ですが、その旨の規定や慣行がない場合には支給日に在籍していなくても支給を認めた例(東京高裁判決昭和49.8.27日本セル事件)や、労使交渉が長引いたという特別な事情があったため認めた例(最高裁判決昭和60.3.12)などがあります。


また、整理解雇や定年退職のように労働者が自由に退職日を選べない場合は、在籍要件を適用することについて合理性がないとする説もあります。


いずれにしても、就業規則や労働契約できちんと明示し、労働者に周知するということが重要です。


私が結婚前に勤めていた会社は、査定期間に在籍していれば退職した後も賞与を支払ってくれました。今思うととてもいい会社だったんですね。50%が外資、50%が日本の大手企業の出資という会社だったので、合理的な考え方をしていたのかもしれません。


その後出産前まで勤めた会社は在籍要件があり、私は10月に出産を控えていましたが、目立ち始めたお腹を抱えながら、7月の賞与をしっかりもらってから退職しました。


そんなこんなを思い出しつつ、判例集でふと目に止まったことについて書いてみました。


〔今日の参考文献〕別冊ジュリスト№134労働判例百選P88~89 労働紛争解決実務講義 河本毅著日本法令P45~47


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