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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

「請負契約」にご注意! 労働者性の強い個人請負

特定社労士の研修で同じグループになった方が「受験関係の仕事で出版社にいる」とおっしゃっていました。


勤務登録の方だったので、会社員ということなのかなと思っていろいろお話していたら、「僕は請負契約なんで・・・」とおっしゃいます。


思わず「悪名高い請負ですか?」なんて、つい失礼なことを言ってしまいましたが、笑って「開業している方も多いので、その方が都合がいいということなんですよね」とおっしゃっていました。


その方は、労働法もよく勉強していらっしゃるし、しっかりと弁も立つ方なので心配ありませんが、私が「悪名高い」と言ったのは、最近、使用者が雇用主としての負担を嫌い、そういう負担のない「個人請負契約」をする例があると聞いているからです。働く側が「請負」とはどういうものか知っていれば問題ないのですが、知らないでいるといろいろと問題があります。

請負契約とは「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその結果に対してその報酬を支払うことを約す」契約です。(民法632条)他方、雇用契約は「当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与える」契約です。(民法623条)


雇用契約が雇われて労働することにより、労働したことの対価として報酬を受け取るのに対し、請負契約は仕事を完成させてはじめて報酬が得られます。請負契約は「労働」ではなく「完成した仕事」に対して報酬が発生するのです。


民法が想定しているような「請負」は建築会社のように家を建てて、それに対して報酬をもらうというように、それなりの技能等のある人が、依頼されて何かを作成するような場合を想定しているように思われます。請負契約のところに、目的物に瑕疵がある場合などについて規定があることからも、そう考えられると思います。


最近問題となっているのは、「請負契約」を結んで「雇用契約」ではないから、雇用保険、労災保険、社会保険等の支払をはじめとして、様々な使用者責任を逃れている「隠れ雇用契約」ともいうべき「個人請負」です。


2週間ぐらい前にも新聞でちょっと見ましたが、都心で顧客の書類などをビルからビルへ運ぶ「バイク便」と呼ばれる仕事をしている人の例がありました。


週5日、朝8時半から夜7時まで自転車で1日平均80キロを走るそうです。一つ荷物を運ぶと、そこで次の指令があるまで待機して、最後に営業所で伝票を書き、帰宅します。会社の指示どおりに荷物を運び、遅刻や欠勤があれば、完全歩合制の給料から差し引かれます。


会社から貸与されるのはカバンだけで、携帯電話、自転車、ヘルメットも傷害保険や国民健康保険なども全部自己負担です。それというのも彼は、配達業務を請け負う「個人事業主」だからです。「20歳で始めた時、『請負契約』と言われたけど、普通の働き方とどう違うのかわからなかった」そうです。


会社の指示どおりに動く、遅刻にうるさいということは時間管理もされている、ということで、彼の働き方は使用従属性が強く、実態は「労働者」であると思われます。


使用者側は、「請負契約」なのだから使用者責任を全て免れると思っているかもしれませんが、労働法の世界で労働者性を問う時は、実態が重視されます。仮に彼が仕事中に大ケガを負ったような場合、もし裁判になれば、事業主は大きな補償義務を負うことになるかもしれません。


「コンプライアンス」というのは、会社にとって「危機管理」と同じなのです。事業主は目先の利益だけではなく、公共の福祉という観点、何よりも自社の「危機管理」という観点からコンプライアンスの意識を高めていただきたいと思います。


なお、バイク便については、厚生労働省が使用従属性など、ある一定の条件を充たせば労働者であるとの見解を発表しています。通達が出されたとのことですが、厚生労働省のHPにはまだ掲載されていないようです。とりあえず新聞記事をご覧ください。(参照)


また、当ブログの過去記事にも労働者性についての記事があります。興味のある方はご覧ください。(過去記事①)、  (過去記事②)


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