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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる14年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

JAL労組の監視ファイル 社員の個人情報とプライバシーの侵害(2)

さて、昨日の続きですが、個人情報保護法にある個人情報とプライバシーの違いはなんでしょうか。


プライバシーを権利として論じる時は、憲法13条(注1)にある幸福追求権を根拠とされます。近年、これを根拠として、はっきり明文化はされていませんが、プライバシー権、環境権、日照権、嫌煙権など、次々と「新しい人権」が主張されています。


注1.[憲法第13条]すべて国民は、個人として尊重される。社会、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。


プライバシー権は、アメリカの判例で「ひとりで居させてもらいたい権利」として、どちらかというと消極的な権利として発展してきましたが、その後「自己の情報をコントロールする権利」として、公権力に対しても保護を求める積極的な権利へと変化してきました。

日本で初めてこの権利が判例で認められたのが、作家の三島由紀夫氏が被告となった「宴のあと」事件です(東京地裁判昭和39.9.28)


私はこの小説をよく知りませんが、ある政治家夫妻をモデルとして、周知の事実はもちろん、三島が想像をめぐらせたこと等が、あたかも、夫妻の私生活を暴露するかのごとくに書かれていて、表現の自由とプライバシー権について争われた裁判です。


判決では、「私事をみだりに公開されないという保障」を要件が整えば法的救済が必要な権利として認めました。要件とは、①私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれのあること ②一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立った場合公開を欲しないであろうと認められること ③一般の人々に未だ知られていないこと の3点を挙げています。


判例を持ち出すと、なんだか堅い話になってしまいますが、「他人には知られたくない私的な情報を守る」権利とでも言いましょうか。ですから、「個人を特定できる」個人情報とは意味合いが違い、もっと根本的な「人が平穏無事に生きていく権利」の中のひとつと捉えていいのだと思います。


最近の問題としては、会社内で、社員に貸与しているパソコンの監視、調査等ができるかということですが、合理的な目的があり、社会通念上の相当性があれば許されるとされています。(日経クイック情報事件東京地裁判平成14.2.26) 就業規則等で私用メールを禁じるとか、必要な場合はモニタリングをすることがある等の規定を作っておくことが、有効だと思います。


社員側にしてみれば、そのような規定もなく、合理的な理由もないのに電子メールなどをチェックされたら、プライバシー侵害を主張することができる可能性もあります。でも、もともとは、会社の備品ですので、社員側はやはりちょっと弱いんですね。


その他には、社員の健康診断などの情報がプライバシーに関わってきますね。こちらについては、労働安全衛生法104条でその事務をする者についての秘密保持義務を定めています。違反者については、6月以下の懲役又は100万円以下の罰金という罰則もあります。


先のJALの事件は、そのような法的な話ではなく、多分社内外のいろいろな情報を集めて、個人の私的な情報を管理していたということなのでしょう。誰でも人に知られたくないことはあるでしょうし、何よりもそんな色めがね的なものを使わず、今、目の前にいる人をよく見て、人間関係を結んでいけばいいのにと、私なんかは思ってしまいますが。


航空会社の労組としては、興味本位な個人情報を集めている暇に、安全管理等をしっかりするということが先ですよね。


〔今日の参考文献〕廣田健二「日本国憲法」P87 別冊ジュリスト№154憲法判例百選P138~139 河本毅「労働紛争解決実務講義」P437~477

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