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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

「QCサークル活動」も業務のうち トヨタ社員の過労死認定

新聞の片隅にのっているニュースについて、ネットで検索するといろいろ関連記事があるのに、テレビのニュースではなーんにも言わないという時があります。

先週、国が控訴を断念して判決が確定した「トヨタ社員の過労死」事件もその一つです。トヨタというのはメディアにとって大口スポンサーということがあるからなのでしょうか。テレビメディアというのは、自らジャーナリズムという部分を捨ててしまったんだなと思います。

名古屋地裁の出したこの事件の判決は、「QCサークル活動」、「創意くふう提案」など、自主的な活動で業務ではないとされていたものについて業務性を認め、労働時間に含めた結果、過重労働であるとしたことで前例のないものでした。

事件は、2002年、2月、トヨタ社員だったAさんが夜勤残業中に致死性不整脈を発症して倒れ、搬送先の病院で亡くなったことから始まります。

Aさんは、まだ30歳の若さでした。祖父、父ともに3代続いたトヨタマンで、品質管理について話し合う「QCサークル活動」や業務上の改善点などを書面にまとめる「創意くふう提案」などにも積極的に取り組み、同僚の信頼も厚かった人です。さらに、労組の活動なども積極的に行っていたため、「今日は労組のことで、またお昼を食べ損なっちゃった」という話をAさんの妻Bさんはよく聞いています。

 

同年3月、Bさんは豊田労働基準監督署に労災申請をしますが、国から(労災は国が管掌している)認められませんでした。直前1ヶ月の残業時間を45時間とされたからです。過労死が認定される基準として、直前1ヶ月100時間以上の残業または、2~6ヶ月の平均残業時間が80時間以上という一応の目安がありますので、それにあてはまらないとされたわけです。

 

身近で夫の働きぶりを見ているBさんは納得できず、裁判までいったのですね。労災の場合、最初の請求に不服がある場合、審査請求、再審査請求を行った上で、裁判へ移行しますから、夫亡き後、幼いお子さん(当時3歳と1歳)を抱えての「闘争」は大変だったことと思います。

 

裁判で争点となったのは、前述の「QCサークル活動」や「創意くふう提案」などに費やした時間が「労働時間」に含まれるかということでした。名古屋地裁では、「事業活動に役立つ性質のもので業務にあたる」と指摘してその業務性を認め、直前1ヶ月の残業時間を106時間45分と認定して、Aさんの死は過労死だと判断しました。

 

判決が出たのは先月でしたが、国側が控訴を断念したため判決が確定したのが先週の14日でした。Bさんは、「社員を徹底管理して無駄を排除するトヨタ特有のシステムで極度の緊張を強いられた」と証言しています。また、「トヨタには賃金のつかない仕事がたくさんある。ラインが流れている時は仕事だけれど、その後は自主活動で仕事ではないと言っている」「トヨタは生産台数だけではなく、他のところでも世界一になってほしい」とも語っていると報道されています。

 

この談話の中には、現在の労働環境の苛酷さというものが凝縮されているように思います。業績の高い会社ほど徹底的に無駄を排除するため、社員の仕事の内容や質も常に高いものを求められる、そして、常に創意くふうや改善をするためにあちこちに目を光らせ、神経を使わなければならない。強健な身体とタフな精神を持たなければ勤まらないような世界が広がっているんでしょうか。「明るく楽しく働く」ことをモットーとしている私には、そんな働き方はとてもできません。

 

トヨタ側は「遺族と国側の訴訟なのでコメントする立場にない。社員の健康管理に一層努めていく」と言っているそうですが、自社の社員が裁判で過労死と認定されたのに、それについて何もなしというのはちょっと腑に落ちないですね。今後の労働時間管理をどうするのか聞きたいものだと思います。

 

結果的に、Bさんの全面勝訴となってよかったと思いますが、6年間もかかって3歳、1歳だったお子さんがもう小学校3年生と1年生だと聞くと、裁判はとにかく時間かかり過ぎでしょうと思ってしまいます。こういうことこそ「改善」してほしいですよね。

なお、過労死については当ブログでも何度か記事にしています。興味のある方はごらんください。(過去記事①)、(過去記事②)  

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