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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

判例にみる同一労働・同一賃金(2)

昨日の続きです。

裁判所は、女子臨時社員と女子正社員の仕事の内容が全く同じであることを認め、顕著な賃金格差を維持拡大しつつ長期間雇用した会社に対して、臨時社員の賃金が正社員の8割以下になる場合は違法と判断したわけです。

「同一労働・同一賃金」についてはどう言っているのでしょうか。

「同一労働・同一賃金について、一般的な法規範として存在していると認めることはできない」としています。

何故なら、実際の法律としてそれを明言しているものがないからとしています。

確かに明文化した法律はありませんね。

さらに、「これまでの日本社会においては、年功序列、前歴加算、生活給などの制度が設けられており、同一(価値)労働同一賃金の原則が単純に適用されているわけではない」

として、しかも労働価値が同一かどうかを客観的に判断するのは「著しく困難」であると言っています。

結局、雇用契約が基本的に当事者同士の自由な契約によるものであるので、公序良俗に違反しない限りはその契約関係を違法とすることはできないのです。しかし、裁判所はけして同一労働・同一賃金を否定したわけではありません。

 

「およそ、人はその労働に対し等しく報われなければならないという均等待遇の理念が存在し」としてそういう考え方を認めています。でも、それは抽象的な理念でそれを判断するための要素がいろいろあり、ある程度の使用者の裁量を許容するのは仕方のないことという考え方を示しています。

それが、この事件では8割までなら認めましょうという結論になったのです。それを超えて賃金格差をつけた部分は違法と判断できるので、差額の支払を命じたわけです。

 

その後、事件は平成11年に東京高裁において和解が成立しました。賃金体系の是正により原告の賃金は5年後には正社員の9割になり、退職金の計算方法も正社員と同一にするなど、原告側の主張をほぼ認めた内容となりました。

 

その後、同じような判例が出ているかと言えば、そうではなく、給食の臨時調理員と正規調理員の労働力を全く同一価値とは判断できない(那覇市学校臨時調理員事件 那覇地判平13.10.17)としたり、その後の控訴審でも、「社会的に許容される限度を超えるものではない」としたりしています(福岡高那覇支判平15.1.16)。

他にも正社員と臨時社員の労働内容が同じなのに賃金は年収で7割程度、平均日額で6割程度だったものを、労働条件は労基法等の法規に違反しない限りは、当事者間の合意によるもので、同一労働・同一賃金の原則がわが国の公序とは認められないとしたものもあります(日本郵便逓送事件 大阪地判平14.5.22)。

 

もともと、「同一労働・同一賃金の原則」は欧州連合(EU)の立法で確立されたものですが、日本の給与体系は学歴、経験、年齢、業務内容、扶養家族の有無、残業の量など、様々な要素で決められていて、簡単に「同じ仕事だから同じ給料」とはいかないのですね。そのような社会的基盤ができていないともいえます。

なかなか裁判所の壁は厚そうですが、丸子警報機事件のように誰が見ても明らかに同じ内容の仕事で、長い期間臨時社員のままで不利益を甘受させられていたというような場合は、認められやすいということでしょうか。

 

今般のパートタイム労働法の改正では、短時間労働者が正社員になれるような措置を設けることが義務化されましたので、幾分、丸子警報機事件での判決内容が影響したのかなとも思います。

この事件では28人の臨時社員が原告となりましたが、やはり労働者が団結して声を上げていくことにより、少しでも変わるものというのはあるのだなと感じました。

この事件の判決要旨はこのサイトでみることができます。(参照) 興味のある方はご覧ください。

〔今日の参考文献〕河本毅著「労働紛争解決実務講義」P966~970

            菅野和夫著「労働法第7版」P178~181

 

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