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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる14年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

「初診日の拡大解釈」ならず。最高裁判決を考える

現在の年金制度は20歳以上であれば学生も国民年金に強制加入となります。

平成3年3月以前は任意加入だったため、社会に出るまでの少しの間ということで、加入していなかった学生が多く、重い障害を負った時に無年金になるということが訴訟等で問題となり、特別障害給付金制度(社会保険庁HP参照)ができました。

それらの方の中で、障害年金受給の要件である「初診日」を拡大解釈すれば、特別給付金よりも多い通常の障害基礎年金が受給できるとして提訴した方たちがいます。

それについての最高裁判決が10日にあり、原告敗訴が確定しました。

初診日の拡大解釈はできないとの判断がくだされたわけです。(新聞記事参照)

提訴した方たちは精神障害を患って障害の状態となったため、明らかに発症が20歳前と医学的に証明できるのに、精神障害という特殊性のため受診が遅れ「初診日」が無加入だった学生時代にあることから、通常の障害基礎年金を受けることができず、「初診日の拡大解釈」を求めて提訴したものです。

詳細は過去記事にあります。(参照)

 

最高裁は、やはりルールを厳格に守るという立場に立ったようですが、法律の趣旨を鑑み、また、精神障害という特殊性を加味すると初診日の拡大解釈があってもいいとする反対意見(4人中1人)つきの判決となりました。

法律というのは、その文言どおりではなく法律の趣旨を考えて判断するというのは、正しい考え方だと私は思います。

しかし、制度を実行するためのルールを作った場合、例外を認める場合には非常に慎重であるべきだと思います。

物事にイレギュラーなことはつきもので、ひとつ例外を認めると「この場合は?」、「あの場合は?」と次から次へと出てくる可能性もあり、結果、ルールがぐずぐずとなり、公平性を保ち制度をきちんと維持することが難しくなる可能性もあるからです。

 

障害年金の場合「初診日」という要件は非常に重要で、初診日に被保険者でなければ受給できないというのは会社員等が加入する厚生年金でも同様です。

厚生年金の場合、「事後重症」という考え方があります。

在職中に何かの病気になりその時は障害状態でなくても、退職後に重症化して障害等級に該当するような障害状態になった場合には(65歳に達する日の前日までの間という要件あり)、障害の原因となった病気の初診日が被保険者である在職中であれば、障害厚生年金を受給できるという制度です。(請求も65歳に達する日の前日までにしなければならない)

 

それらの場合も明らかに発症は在職中だけれど受診が遅れ、「初診日」が退職後になり、もし初診日が拡大解釈されれば年金が受給できるなんて例があるのではないかと思われます。

思いつくだけでも、がんや、糖尿病、リウマチなど、結構重症化するまで時間のかかる病気というのはあると思うからです。

そんな具合に初診日の拡大解釈というのはとても難しい問題をはらんでいるなあと、私は感じていました。

 

しかし、この問題で1つだけ言えることは、そういう重要な事項について国民はどこまで理解しているだろうか、そのために国は何をしているだろうかということです。

情報を積極的に入手できるような人たちはいいですが、必ず「情報弱者」となってしまう人たちがいます。

「国民の共同連帯で国民皆年金」と言うのなら、広くあまねく制度についての情報を国民にきちんと知らせる義務が制度を運営する国側にはあると思います。

その点については、現状はまだまだ不十分なのではないかと思いますし、私たち専門家である社労士も積極的に活動していかなくてはいけない問題だと思います。

 

〔管理人注〕最高裁は、15日、同じ争点の別の訴訟では原告勝訴としました。統合失調症の男性が20歳前に胃腸の不調で診断を受けていることから、胃腸の不調は統合失調症が原因と思われ、「初診日」が20歳前にあると考えられると認めたものです。男性は2007年に死亡していますが、訴訟を引き継いだ父親が死亡時までの障害基礎年金を受給する権利を得ました。

やはり、精神障害における「初診日」の解釈は非常に難しいと思います。(2008年10月17日)

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