FC2ブログ

おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

退職後の同業他社への再就職制限は許されるのか?

厚生労働省からの委託事業である労働契約支援事業のアドバイザーに就任したことは以前記事にしました。(参照)

その関連のパンフレットを連合会(全国社会保険労務士会連合会)が作成しています。

労使トラブルを未然に防ぐためにQ&A形式で労働問題の概略が書かれています。

全般としてはわかりやすいと思いますが、中で気になったことがありました。

退職後の社内機密保持のことです。労働法用語では「競業避止義務」などという言い方をします。

パンフレットでは、ゲームソフトメーカーで商品の企画・開発を担当していた労働者が退職することになったが、退職後5年間は同業他社に再就職しない旨の契約は可能かというQがありました。

私は一見して「5年は長いでしょ」と思いましたが、Aとしては、労働者が退職後どこに転職しようと基本的には自由であるが、退職後に会社で得たノウハウをそのまま利用されたりすると、会社の経営に支障をきたすこともあるので、就業規則上で競業避止義務を明記して、個別に労働者と期間や地域を特約するようにとありました。

これで、Aとして間違いではありませんが、Qにある「5年」が適当であるかどうかについてもちょっと書いてほしかったと思います。

 

労働者には基本的に職業選択の自由がありますし、同業他社への就職ができないとなると、時には労働者の生活が脅かされることにもなります。

一方、その会社だけが持つ特殊な知識や情報は会社の財産であり、保護されてしかるべきものと考えられます。

かくして、合理的な範囲で特約を結ぶことは許されると考えられるわけです。

合理的な範囲とはこれいかに?

となると、やはり判例が頼りとなります。

 

古いものでは、神戸市の洋服屋に裁縫部主任として雇われる際の「退職後は神戸市において一切裁縫または呉服商を営まない」という契約は、期間に制限がないが、地域に制限があるから有効としたものがあります。(大阪控判明40.2.9)

その後に出たリーディングケースとなる判例では、

各種冶金用副資材の製造、販売をする会社が雇用契約終了後2年間は競業関係にある企業と一切の関係を持たないことという契約が有効かどうか判断する際の考え方として、

制限される期間、場所的範囲、対象となる職種の範囲、代償の有無について、

①企業側の秘密保持に対する利益

②労働者が受ける不利益(転職、再就職の不自由)

③社会的利害(独占集中の虞れ、それに伴う一般消費者の利害)

の3つの視点に立って慎重に検討することを要するとしています。

その上で、この事案については、制限期間が2年である、特殊な分野の営業である、在職中秘密保持手当てを支給していたことなどから、合理的範囲を超えてはいないと判断しています。(奈良地判昭45.10.23フォセコ・ジャパンリミテッド事件)

 

無効とされた例では、

退職後3年間の競業制限、(浦和地決平9.1.27東京貨物車事件)、業務が単純作業であり会社独自のノウハウがないのに従業員の移動を禁止(大阪地判平12.6.9キヨウシステム事件)などがあります。

業務の特殊性や秘密保持の必要性の高さがまずあって、期間や場所の制限の妥当性、場合によっては代償措置(秘密保持手当て等)の有無なども判断材料となるということですね。

さて、くだんのQはゲームソフトの開発ですから、業務の特殊性はあるとして、やはり5年は長いということになると思います。

〔今日の参考文献〕「労働紛争解決実務講義」河本毅著P278~283 ジュリスト労働判例百選P162~163

            

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する