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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる14年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

労働契約に付随する誠実義務を考える

自衛隊の要職にある人物が政府見解と異なる論文を発表して更迭されました。

要職にあった時の定年年齢とそうでない時の定年年齢にずれがあったため(60歳と62歳)、更迭後定年退職扱いとなり6000万円ほどの退職金も受け取るということで、自主返納するよう圧力をかけているということが報道されています。

私は自衛隊法もよく知らないし、特に情報も持っていないのですが、退職金の自主返納についてはそれなりの根拠が必要だと思うし(根拠がないから「自主返納」させようということなのでしょうが)、ごたごたを避けて懲戒処分としなかったようですから、結構難しいことだと思います。

それよりも、政府見解と異なる考え方をしていることはわかっていたのですから、このような人物を要職につけた任命責任の方がずっと重いと考えます。

さて、個人の思想、信条の自由や言論の自由は当然保障されるべきものですが、労働契約と関連していた場合はどのように考えたらよいのでしょうか。

労働契約をすると、労働者には労働をする義務、使用者には労働に見合った対価を支払う義務が生じます。

その他に就業規則や労働契約書にある労働条件について、互いに守る義務が生じるわけですが、そこに書いていなくても当然守るであろうと考えられる「誠実義務」というものが発生します。

労働契約の性質上、お互いに信頼関係を作っていくことが重要ですから、双方が相手の利益に配慮して誠実に行動することが求められるのです。

使用者側について言えば、代表的なものは「安全配慮義務」です。

労働者の生命や健康を守り快適な職場環境(物理的な環境のみならずセクハラ、パワハラに配慮することなども必要)を作る義務です。

 

労働者側にすれば、会社の不名誉になるような行動は慎むというようなことが求められると思います。

たとえ私生活上においても、労働者が自社製品の不買運動をしたり、ブログなどで会社の悪口などを書いて、多くの人に読まれたとしたらやはり「誠実義務違反」ということになるでしょう。

最近の判例では、新聞記者が自分のホームページ上で取材源などの企業秘密を公表し、自社の体質を批判したことについて誠実義務違反とされました。(東京地裁判平14.3.25日本経済新聞社事件)

しかし、これらの行為について懲戒処分を行うためには、就業規則できちんと規定し労働者側に周知していなければできません。通常、就業規則上に「会社の名誉を傷つけた場合」とか、「秘密をもらした場合」または、包括的に「前各号に準ずる行為をした場合」などと書かれていると思います。

 

契約というのは当事者同士の信頼関係に基き行われるのが基本ですから、細かいことは考えなくても信頼を傷つける行為はしないと理解すればよいと思います。

表現の自由とは全然話が違いますが、会社が違法なことをしている場合に告発するというような場合はまた違ってきます。(過去記事参照)

前述の元自衛隊幹部は、思想、信条の自由、表現の自由が「誠実義務」に勝っていると思っているふしがあります。彼は一般の労働者とは違いますが、労働者としては、個人の表現の自由だと思ってとった行動が、個別の内容によっては誠実義務違反となる場合もあるということを理解しておくべきだと思います。

〔今日の参考文献〕菅野和夫 『労働法第七版補正第二版』P63~71 P377~378

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