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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

労働契約法に明文化された安全配慮義務

労働基準法は多くの方が名前ぐらいはご存知だと思いますが、「労働契約法」はどうでしょうか。

今年3月から新しく施行されている労働契約のルールについて規定されている1~19条までしかない小さな法律です。

労働契約というものは「契約」の一形態ですから、民法上の契約のルールである当事者が平等、対等の関係にあるという前提で行われるはずですが、現実にはどうしても使用者側が強い立場になります。

使用者はどんなに小さな事業所であっても働く場所や設備、資金など資本を持っていて、しかも個人ではなく組織である場合が多いわけです。

対する労働者は一個人であり、日々労働することにより生活の糧を得ているため、労働力を倉庫にしまっておいて高く売れるときに出して儲けようなんてことはできません。

多少不本意でも、働かないと食べていけないため契約を結んでしまうということはありがちなことと思われます。

そのような場合に、民法上の「契約自由の原則」(当事者が合意すれば公序良俗違反など法令に違反しなければどんな内容でもよい)という原則をそのまま適用すると、どんどん労働者は不利になってしまいます。

それを防ぐために最低限の労働条件を定めた労働基準法があるわけです。

しかし、労基法は労働条件についてはいろいろ定めていますが、契約の「あり様(ありよう)」については規定がありません。

そのため労使トラブルになったときに、労基法に規定のないことについては民法の「信義則」(注1)や「権利の濫用の禁止」(注2)や「公序良俗違反」(注3)などの規定により、裁判所で判断されてきたという歴史があります。

注1.民法第1条第2項 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

注2.同第3項 権利の濫用はこれを許さない

注3.同第90条 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

労働契約法ではそれらの判例により確立された考え方を明文化して法律として確立しました。

 

労基法と違い罰則もないのですが、裁判になったら負けですよと言っていたことが、「法律に書いてあるからだめですよ」と言えるようになった効果は大きいと私は思います。

私がこの小さな法律の中で注目している条文は、第5条の

「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」

という使用者の安全配慮義務を明文化した条文です。

安全配慮義務は、もともと労働災害により被害を被った労働者が労災だけではカバーしきれないような損害賠償や慰謝料請求の裁判を提起する中で、判例法理として確立されてきたものです。

 

最高裁は安全配慮義務について、「労働者が労務提供のために設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体を危険から保護するよう配慮する義務」としています。(川義事件昭和59.4.10)

この義務は、労働契約が信頼関係に基づいている以上お互いの利益に配慮するべきとも説明されます。

ですから、労働者側にも労働契約に伴い会社の信用名誉を傷つけないように行動するとか、秘密を守るなどの義務が生じると考えられています。

 

近年の判例では、過重労働を放置してうつ病になった労働者が自殺した責任や、セクハラについて当事者だけではなく会社の責任も認めた例などもあります。労働者の健康だけではなく職場の人的環境にも配慮が必要だとされたものです。

法令にはない職場のいじめなどについても、労働者が会社に相談をしているのに放置していたような場合、安全配慮義務(職場環境配慮義務)違反を問われることになります。

条文では「労働契約に伴い」とはっきり書かれているため、労働契約を結んだ以上生じる使用者の義務なのだということが明確になったと思います。

物理的な環境だけではなく、人間関係などについても何か不都合があれば、労働者側は使用者側に改善を要求できるということになると思います。

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