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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

年休の事後請求は認められるのか?

年次有給休暇については以前詳しく過去記事にしたことがあります。(過去記事①)、

(過去記事②)

新聞の片隅に、3ヶ月ごとの期間で契約社員として働く息子の会社では、有給休暇は前もって届出ておかなければ許可されず、風邪をひいて急に休んだ時も欠勤扱いとなってしまった。

というような投書が掲載されていました。過去記事ではその辺のところについては書いていませんでした。

はるか昔ですが、私が会社員をしていた時には、急に身体の具合が悪くなって休みをとる時などは、「有給休暇にしてください」と言って有給休暇扱いにしてもらっていたような気がします。

社労士になって小さな会社の事業主さんと話しをするようになって、彼らは社員に休まれるということをとても嫌うということがわかりました。

確かに小さな会社だと、ぎりぎりの人数で仕事をこなしていますから、誰かが休むということは即仕事に穴があくということになるのですね。

忙しい時にそれをやられたら困るということのようなのですが、過去記事にも書いたとおり、とりあえず、年次有給休暇については要件にかなえば労働者に発生する当然の権利であり、時期を決めることと、何のために使うかは労働者が自由に決めて請求できるわけです。

使用者側には時季変更権がありますが、「事業の正常な運営が妨げられる」ということがよほどはっきりとしていない限り、権利の濫用となります。

 

しかし、就業規則などで定めて事前に届出制にすることは労使の「契約」の範囲内ということで違法ではありません。ただし、労働者が年休を取得することを抑制するような取り決めは違法となる可能性があります。

判例では、前々日までに請求書を提出しなければならないとした規則を、使用者側には代替要員を確保したり勤務時間割等を検討して時期変更権を使うかどうか考える時間が必要として、合理性があるとしています。(電電公社此花電報電話局事件 最判昭57.3.18)

 

さて、前述の投書にあった風邪をひいて急に休んだ時などに事後請求で有給休暇にできるかということについては、判例では

「使用者の裁量に委ねられているというべきであり、この申し出によって当然に休暇取得の法的効力を生ずるものと解すべき法的根拠はない。」としていますが、

「ただ、当該申し出の事情を勘案すれば年次有給休暇として処理することが当然に妥当であると認められるのに、使用者がもっぱら他の事情に基づいてその処理を拒否するなど裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法となる」としています。(東京貯金事務センター事件東京高判平6.3.24)

 

この事件は職員が遅刻と組合事務所入室により勤務をしなかったことを理由に賃金減額、訓告とされた処分に対して、遅刻は通勤電車の遅延で年休または特別休暇として処理されるべきであったとして争ったものですが、使用者側は違法ではないとされました。

この労働者が日頃から勤務時間内に昼食をとったり、新聞を読んだり、離席するなどして職務専念義務違反があったという事情もあったようです。

考え方としては、事後に年休取得の申し出があった場合には、認めるかどうかは使用者の裁量の範囲である、しかし、事情を考慮して年休として認めるのが妥当な場合は認めるべきということになると思います。

 

そうすると、風邪をひいて突発的に休んだ場合に有給休暇として認めてほしいというのを認めるのが妥当かどうかという話になりますね。

社内のルールとして事前に何日か前に届け出ることになっている場合でも、突発的な病気やけがは届け出ることはできないわけです。ですけれど、労働者としてはそういう時こそ有給でゆっくりと療養に専念したいと思うのが当然でしょう。

有給休暇というのは、健康で文化的な生活を送るために、労働者を労働から解放して心身ともに休息を得るということが目的とされますが、事前にわかっていることだけではなく何かあった時に有給で休めるという保障も、労働者にとってはありがたいものだし必要ではないでしょうか。

有給休暇があるのに病気になったら欠勤扱いというのは、妥当な扱いとはいえないのではないかと私は思います。もっとも、仮病を使ってちゃっかり仕事をさぼる社員などもいるかもしれないので、その辺のチェックは会社としては必要かもしれません。

 

この投書者の息子さんの会社は8割が契約社員ということで、どういう会社なんだろうとちょっと興味があります。労働組合などがあればきちんと交渉して、突発的な病気等の場合は有給休暇利用を認めるように会社と交渉するなどができると思うのですが、やはりひとりひとりの社員の力は弱いので、会社の言いなりにならざるを得ないのでしょう。

この会社の扱いについて、はっきりと違法とはいえないグレーゾーンだと思いますが、年休の自由利用を阻害しているし、見方によっては年休取得を抑制しているようにも思われますから、かなり黒に近いのではないかと私は思います。

〔管理人注〕この記事を書いた後でもう少し勉強してみたところ、法律的には事後請求を認めないということは問題ないという結論を得ました。黒に近いグレーゾーンというのは私の認識の誤りでした。お詫びして訂正致します。それについては4月10日の記事に詳細を書きましたので、興味のある方はご覧ください。(参照)

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