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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる14年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

製造現場で横行する労災隠し

昨日、NHKの「クローズアップ現代」で、製造現場での労災隠しについてのレポートがありました。http://www.nhk.or.jp/gendai/


例として、派遣会社から派遣されてスーパーで働く女性が業務上のけがをしたのに、休憩時間中のけがとして処理され、労災とはならなかった、とか、大手電機メーカーの工場で請負社員として働く男性が、業務中に踏み台から転落して肋骨を骨折したけがについて、全く別の場所の別の会社の倉庫でけがをしたことにする(「労災とばし」というらしいです)というようなことが挙げられていました。

通常、労働災害が起きた場合事業主は労働基準監督署に届出の義務を負います。派遣社員の場合でも派遣元と同時に派遣先の会社も自社の中で事故が起きたのですから、届出の義務を負い、場合によっては当局の指導を受けることになります。請負の場合は対等の事業主同士の関係ということで、届出の義務を負わないで済むため実体は派遣なのに請負を装うというのが当ブログでもたびたび問題にしている偽装請負でした。


派遣会社や請負会社は、何よりもメーカーに仕事を打ち切りにされることを恐れています。一昔前の下請け業者はそれなりの技術を武器に、大手メーカーともある程度対等に渡り合えたのですが、今の下請けは人を送り込むだけですから、代替がいつでもきくのです。


そのため、労災事故などで当局の調査・指導などが入ることによって、メーカーに迷惑をかけたくないのです。その結果、労災を隠すことになり末端の労働者が一番迷惑をこうむる事になります。労災なら無償で治療ができ、休業補償手当ても受けられるのに、労災扱いでなくなれば自己負担金を支払い、休業補償もされないからです。その傾向は製造業の派遣が解禁になってから顕著になったと言われます。


今や製造業の現場では派遣、請負など非正規雇用者が5割を占めています。本来安全衛生法などにより安全を守られるべき労働者ですが、派遣、請負の労働者はそのような法律の範囲外に置かれてしまいます。(安全教育などがなおざりにされている)あげくに事故が起きても最後の砦とも言うべき労災すら適用してもらえないとなったら、これはもう産業革命の頃の劣悪な労働環境と変わりがなくなってしまいます。


こういうときの大手メーカーの言い分は「国際競争に勝つためには人件費を削らざるを得ない」というものです。社会全体の空気も大手メーカーが立ち行かなくなったら日本の経済界も失速してしまうというものです。しかし、本来企業が負うべき責任を一個人である労働者に全て負わせた上で利益を得たとしても、それが真の利益と言えるのでしょうか。


経済がどんなに好調であっても、それが一部の人を踏み台にしたものであるならばその社会はいずれ崩壊するのではないでしょうか。製造業がいくら利益が上がっても買うべき消費者が疲弊してしまったら、結局物は売れなくなりますよね。「海外へ売るからいいや」とでも考えているのでしょうか。


現在正規雇用者として働いている人も、間近に非正規雇用者の現状を見て「自分はとにかく正社員でいたい」と思っているでしょう。そのため、会社に対して労働者の権利を主張しにくくなっているのではないかと危惧されます。結局、企業に比べ弱い立場の労働者が泣くしかないのです。


私は、社会全体の幸福なくして個人の幸せはあり得ないと思います。自分の安寧な生活が一部のいろいろな意味での社会の弱者を踏み台にして成り立つものであるならば、けしていい気持ちではいられないはずです。こういう由々しき事態に対して社会保険労務士会として何かアピールできないのかなあと思うのですが、残念ながらあまりそういう話はきかれません。


良い法律があっても実行されない限り、無意味なのだなあと思いました。

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