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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

難しい過労自殺の労災認定

昨日記事にした県会の研修では、基調講演の後分科会に分かれて研修を行いました。

私は「過労自殺と労災認定」という分科会で労働弁護団でその種の事件を多く扱っていらっしゃる弁護士さんのお話を伺いました。

労働弁護団とは全国で1500人ぐらいの弁護士が所属していて、労使トラブルなどの時に労働者側の代理人となって活動しています。

講師となった弁護士さんは、新聞記者出身の方で記者時代から労働問題に関心を持っていらしたそうです。

過労自殺とは、仕事によるストレスが原因で精神障害を発症し自殺に至る災害で、業務に起因することが明らかな疾病となれば、労災として認定されますが、現状ではなかなか認定されるのが難しいケースが多いようです。

対象となる精神疾病はうつ病などで国際疾病分類表(参照)で第5章に分類されるものだそうです。

多いのはうつ病ですが、職場においてどの程度の心理的負荷があったか考慮するために基準があり、(参照)Ⅰ~Ⅲまでの段階でⅢが一番重い度合いとされます。

表によると、「大きな病気やけがをした」、「交通事故(重大な人身事故など)を起した」、「会社にとっての重大なミスをした」、「退職を強要された」などはⅢとなっていますが、出向、左遷、仕事上の差別、不利益取扱い、転勤、上司とのトラブルなどはⅡ、同僚、部下とのトラブルはⅠなどとなっています。

Ⅲに該当すればかなり認定される可能性が高いそうですが、Ⅱに該当することだといくつあっても認定されないということで、現在見直しが行われているそうです。

 

労災の申請は会社を管轄する労働基準監督署に行いますが、精神障害による労災申請は年々増えています。しかし認定率は30%余りで(未遂も含む自殺に限ると45%)けして高いとはいえません。

脳、血管系の病気による過労死と違い、精神障害はじわじわと進行する場合も多く、業務との因果関係を証明する難しさがあるからです。また、講師の方によると労働基準監督署の対応が杓子定規で、個別の案件をじっくりと見てくれない場合もあるとのことです。

労基署で認定されない場合は審査請求、再審査請求とありますが、それらも最初に認定されないとなかなか厳しいそうです。再審査請求でだめだといよいよ裁判となるわけですが、「裁判まではやりたくない」という遺族の方も多く、埋もれてしまう案件も多いのが現状のようです。

 

裁判例などもお話がありましたが、「海外でのプロジェクトチームのリーダーだったが、計画変更と大幅な遅延を経験」、「未経験部門、しかも相当困難な業務への配転」、「上司による常軌を逸したいじめ、嫌がらせ」、「会社におけるトラブル処理を一人で任される」などの後自殺したが、いずれも労災の認定が受けられず、裁判で認定された例です。

講師の方は、事例からみると、特に重い責任を一人で任せられたりして、相談する人が回りに誰もいないような状況になったときに精神疾患を起す例が多いので、そういうことも労務管理上気をつけるべき事柄だと強調されていました。

そして、今後リストラなどが進みさらに過重労働を一人で抱え込まざるを得ない労働者が増えて、益々精神疾患を病む人が増えるのではないかと心配しているというようなお話もありました。

労災の申請はもちろん社労士の仕事の範囲ですが、裁判までは手が出せませんので、社労士としては、やはり労務管理のところでそれらをくい止めるというのが一番できるアプローチだと思います。とても中身の濃い内容だったと思いますので、はるばる熊谷まで出かけたかいがあったと感じました。

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