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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

「長時間労働+いじめ」が最悪の結果に

昨日、労災の認定基準項目に「職場でのひどいいじめ」が加わったということを記事にしました。関連の判例をちょっとみてみましょう。

精神的な病気が労災だと認められるためには、

①対象疾病に該当する精神障害を発症していること(うつ病等特定の病気に限定されています)

②発病前おおむね6ヶ月の間に客観的に当該精神障害を発病させるおそれのある業務による強い心理的負荷が認められること。(項目ごとに強度が設定されています)

③業務以外の心理的負荷及び固体側要因により当該精神障害を発病したとは認められないこと。

以上をいずれも満たすことが必要です。要するに個人的な原因が見当たらず業務による過度のストレスのために発病したということが、客観的にはっきりしている場合ということですね。

対象となる病気やストレスを評価する表については過去記事からリンクできます。(参照)

裁判になると会社側は本人がうつ病になりやすい気質だったとか、私生活上の失恋とか家庭内の問題などを持ち出して業務との因果関係を否定することがよく見られます。

パワーハラスメントがからんでいるような場合には、相手方が指導の一環だとか、そんなつもりはなかったなどと言うため、完全に業務と関係があるんだと証明するのもなかなか難しく、裁判になると労働者側も大変な思いをするようです。

2007年に名古屋高裁で労災が認められた裁判も典型的な「過重労働+パワーハラスメント」の事例です。(名古屋南労基署(中部電力)自殺事件07.10.31)

電力会社勤務で技術職のAさんは主任に昇格した平成11年8月を境に残業時間が増えて、9月には109時間32分、10月には123時間38分の時間外労働をしたことが裁判で認定されています。その後11年11月に30代半ばの若さで焼身自殺をしたため、遺族が労災を申請しましたが認められず、裁判となったものです。

一審の地裁(06.5.17)で労災と認められ高裁もこれを支持して確定しました。

Aさんの場合は死亡前6ヶ月間の所定休日が51日あるのにそのうち26日も休日出勤をしていて、同じ課の中では最も多く休日出勤をしていました。

地裁判決では「心身に支障をきたしてもおかしくないほどの長時間労働に従事していたといえ、その疲労の蓄積、さらにこれによって生じる精神的疲弊も極めて大きかったと評価できる」と認定されました。

 

裁判ではAさんの上司によるパワーハラスメントも明らかになっています。

この上司は、課員を課長席に呼びつけ他の課員に聞こえよがしに大声で叱りつけるなど見せしめ的な指導方法をとり、課員の人間性を否定するような誤った指導行為をしていたと裁判で認定されています。

Aさんも「おまえなんかいてもいなくても同じだ」と言われたと語っています。

また、Aさんが常時身につけていた結婚指輪について、業務の遅れを踏まえて、

「たるんでいる」、「会社の中ではきちっとして、家庭の問題を会社に持ち込むな」、「その指輪は目障りだ。おれの前では指輪を外せ」などと暴言ともいえることを言っていたことが明らかになっています。

これらはAさんが遺書に書き残し、他の社員の証言からも明らかになったことです。Aさんは自殺する前に指輪を外し遺書を残したのです。

 

判決文では、パワーハラスメントについて、

文献を引用しつつ、パワハラをする上司について

①部下の心を傷つけていることに無頓着あるいは無反省

②パワーハラスメント行動に対し自己コントロールができない。

③部下に対する好き嫌いが激しい

という特徴があるとしていて、この事例は典型的なパワーハラスメントだとしています。

この上司は「おれがAを昇進させた」とか、「期待しているから怒るんだ」などと広言していて厳しい叱責が繰り返されていたそうです。

几帳面で真面目なAさんは、この上司の過大な要求を断ることもできず、自責の念にかられ精神的に追い詰められたと認定されています。

 

裁判では、パワーハラスメントについて

「組織・上司が職務権限を使って、職務とは関係ない事項について、あるいは職務上であっても適正な範囲を超えて、部下に対し、有形無形に継続的な圧力を加え、受ける側がそれを精神的負担と感じたときに成立するものである」としています。

セクハラ同様、受ける側がいかに感じるかが大きなポイントとなるわけです。

会社側は労災保険が使用者の無過失責任に由来することや、安易に認めると労災保険の財政が逼迫するなどと、労災を限定的にとらえるような反論をしますが、労災保険特別会計は膨大な黒字でそういう言説は根拠がない、とばっさり斬られています。

 

最終的にAさんの業務は量も質も過重であり、パワハラとあいまって極めて強いストレスを受け発症し自殺に至ったもので、業務に起因することは明らかであるとされました。

Aさんの経歴には自殺した年の6月に労働組合の支部執行委員に就任したとあります。この上司が労組活動を頑張っているAさんに対して嫌がらせをしたんだろうかとも推察してみましたが、判決文にはそういう話は出ていませんでした。

「上司」たる地位にある人は部下とのコミュニケーションのとり方などについて、勉強していかなくてはいけない時代なのだと思います

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