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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

「セクハラによる懲戒解雇は無効」判決雑感

先週、セクハラ発言を理由とした懲戒解雇を無効とする判決が東京地裁でありました。

セクハラ発言で懲戒解雇されたのは、大阪に本社のある機械メーカー子会社の取締役兼東京支店長だった男性で、2006年12月、慰安旅行の宴会の席で女性社員に対して、

「胸が大きいな」と発言して胸を測るそぶりをしたり、「ワンピースの中が見えそうだ。この中で誰がタイプか答えなかったら、犯すぞ」と話し、会社はセクハラと認定して就業規則に基づき懲戒解雇したということです。

この男性は日常的にも酒席で女性社員の肩を抱いたりするなどの行為があったということで、裁判では、

「男性の言動は女性を侮辱する違法なセクハラで、相当に悪質」と認定されています。しかし、懲戒解雇処分は重すぎると判断したようです。

懲戒解雇の場合、退職金が減額またはなしという場合が多く、労働者にとっては不名誉なことでもありその後の再就職にも影響が出るということで、普通解雇よりはさらに慎重にすべきとされています。

①懲戒となる理由の明示(就業規則などで明記)と周知(きちんと知らせ説明して納得させておく)

②労働者に弁明の機会を与える

③過去の同様の事例と照らして同等の処分にする

④規律違反の種類、程度その他の事情に照らして相当な処分か

などが問われることになります。

裁判では特に④が重要視されるわけですが、この事例はいきなり懲戒解雇としてしまったようで、本来は厳重注意して指導を徹底する、それでもだめなら降格、減俸など段階を経て懲戒解雇という最も重い処分に進むのがよいとされますので、この事例では懲戒権の濫用と判断されたのだと思われます。

 

私はこの裁判で二つの疑問を持ちました。

懲戒解雇とせず普通解雇だったらどうだったんだろうということと、この男性は取締役兼東京支店長という地位にあり、労働法的にみて「労働者」と言える人だったんだろうかということです。

前者については、いきなり解雇はやはり「解雇権濫用」とされる可能性が高いかなとも思います。

では、後者についてはどうか。

労働基準法をはじめとする様々な労働法は労働者の保護が大きな目的の一つですから、労働者でない人はその保護の対象外となるはずです。「解雇権濫用法理」も「懲戒権濫用法理」も労働者であればこそ適用されるのです。

労働者かどうかの判断としては、役職などに関わらず使用従属性があるか、すなわち、会社に対する経営に参加せず労働時間などもしっかり管理され、職務内容も自分の裁量範囲が狭いなどが判断材料となるのですが、そもそも就業規則が適用されているということは、この人はやはり「労働者」ということになるのでしょうか。

 

そうだとしても、この会社の親会社の機械メーカーは大正時代創業で資本金170億余り、社員数は子会社も含めて5000人以上いる大きな会社です。子会社とはいっても東京支店長ということは、その事業所の中ではトップの地位にある人です。

そういう人が前述のような言動をすること自体信じられませんが、やはり、会社としてはまず日頃から社内全体で「セクハラは悪」という啓発活動をしておくべきだったと思います。

全くの推察ですが、支店長がそういう態度だったということはそのあたりが徹底されていなかったんではないでしょうか。

セクハラは言う方は冗談のつもりの軽い気持ちでも、言われた方は非常に傷つく場合があります。それがもとで病気になる例も稀なことではありません。平気でそういうことを言う人は個別に注意してもなかなか難しい面もあると思います。

そういうことは社内全体で注意を喚起していくことにより、職場環境を変えていくのが最も得策であると私は思います。もちろん就業規則でしっかり規定することも大事です。

 

なお、平成19年4月1日より男女雇用機会均等法が改正になり、事業所の規模に関わらずセクハラに対する雇用管理上の配慮義務が事業主に義務付けられました。周知・啓発活動、相談窓口の設置、事後の迅速な対応などが義務付けられました。女性だけではなく男性に対するセクハラも違法とされます。

今、セクハラで悩んでいる方は厚生労働省のこちらのサイトが参考になると思います。(参照)

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