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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

賃金をもらう権利を第三者に譲れるか?

試験監督を務めた関係で今年の社労士試験の問題をもらっていたので、昨日労働基準法の択一式をやってみました。

今年の労基法は比較的素直なわかりやすい問題だったのではないかと思います。

私の頃は一肢の問題文が10行ぐらいあるものもあったりして、読むだけで大変な問題もありましたから、そういう問題はなかったですね。

問7の寄宿舎の問題なんかは、ちょっと意外かなという気もしますが、予備校などではひととおりはやりますから、普通に勉強していればできるでしょうが、初めての受験で時間的余裕がなかったりすると、勉強していなくてちょっと焦るかなという感じでしょうか。

私がちょっと難しいかもしれないと思ったのは、問4の賃金の原則を問う問題でした。

賃金は通貨で直接労働者に全額を毎月1回以上一定期日に支払うということが労働基準法で規定されています。(過去記事参照)

この問4はこれらの労働基準法で決められた原則が、民法よりも優先されるということをよく理解していないと難しかっただろうと思います。

正しいものを選ぶのですが、正解である「賃金は直接労働者に支払わなければならず、労働者の委任を受けた弁護士に賃金を支払うことは労働基準法24条違反となる」という肢は通達が出ているので、それを知っていれば簡単ですね。

これは、民法的原則からいうと法定代理人は委任を受けた事項について本人に変わってできるのですが、賃金については労基法により「直接本人に渡す」という規定があり、特別法である労基法が民法に優先されるため、たとえ法定代理人でもだめですよということですね。

 

他の×となる肢の中で、賃金債権の譲渡が行われたときに確定日付のある証書によって通知した場合に限り、賃金債権の譲受人はその支払を求めることができるという最高裁の判例がある(問題文の表現は少し違いますが簡略化しました)なとどいうのは、民法を知っている人ほど、本当っぽく感じてしまうかもしれません。

賃金というのは「債権」でもあるわけです。「債権」とは何かを要求する権利です。働いた分に見合った金銭を要求して受け取る権利が賃金債権です。

民法では債権の性質上権利内容が変わってしまうようなものや法律で譲渡が禁止されているようなものを除き、「債権」を第三者に譲り渡すことができることになっています。賃金はこの制限の中には入ってきませんので、賃金を債権として第三者に譲渡することは可能です。

 

では、譲渡された第三者が労働者に変わって雇い主から賃金を受け取ることができるか?

民法の原則ではできますが、特別法である労働基準法で「直接労働者に渡す」という規定がありますので、どちらが優先されるのかという話になります。

判例では、交際していた男性に薬を飲まされてレイプされた女性が「お詫び」として退職手当から200万円を払ってもらう約束をしますが、その約束が果たされなかったとして、相手の男性の会社に200万円を請求した事件があります。

女性は弁護士を介してきちんと法律的に債権譲渡の手続をとっていました。しかし、裁判所は譲渡についてはできるとしましたが、退職手当の支払については賃金の直接払いの規定が罰則もある強い規定であるということで、原則を貫く形で労基法を優先させ、女性の訴えを斥けました。(最判昭和43.3.12小倉電話局事件)

この事件は、債権譲渡について会社は通知を受けていましたが、「強迫」を理由に男性社員が取消の通知を会社に出したため、会社は男性に支払ったという経緯があります。

判例というのもよくよく読むといろいろ経緯があるのですよね。

でも、考え方としては「直接払い」の原則は非常に強いということだと思います。

 

というわけで、例えば、サラ金業者が賃金債権を譲渡されたから、うちらに払えと言ってきた場合も「労働基準法24条により本人にしか支払えません」と言ってよいことになります。

但し、民事執行法に基づく差し押さえの場合は裁判所が正式の手続を経て行うものですので、債権者に直接支払うことができます。

試験問題から随分脱線してきましたが、私も判例など細かく勉強しだしたのは合格してからなので、受験生の皆様は細かいことに時間をかけずまず合格するために基本的なことを勉強なさったらよいと思います。

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