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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

裁判官によって随分違う荷重労働の認定

以前過去記事にした「喫煙時間は労働時間か休憩時間か」(過去記事参照)に関連する裁判例について、詳細が労働判例を扱っている雑誌の最新号に掲載されていて、昨日社労士会に行ってその雑誌をコピーせさてもらいました。(年契約でいささか値が張る雑誌なので、いつも購入を悩んでいます)

「国・北大阪労基署長(マルシェ)事件 大阪高裁判平21.8.25」という裁判ですが、それは特に喫煙時間について争っているわけではなく、居酒屋チェーン店を営む会社に店長として勤めていた元店長(発症当時35歳)が、店内で急性心筋梗塞を起して3週間ほど入院した後に、職場復帰したものの2年半後、再び体調不良となり、退職勧奨の末退職した後労災申請したものですが、認められず裁判までいったものです。

一審では業務との因果関係が否定され、労災と認められませんでしたが、二審の高裁では原告側の主張が認めら逆転勝訴となったものです。

一審では、この店長が1日20~40本吸うヘビースモーカーで、喫煙歴も15年と長かったことから、発症のリスクという点で問題視されたことと、労働時間はそれほど長くなかったとして、病気と業務との因果関係が否定されました。

一審と二審の発症前1ヶ月の認定された法定時間外労働時間は、一審が78時間52分、二審が100時間14分と大きな開きがあります。

一審では休憩時間を毎日ほぼ1時間と認定していますが、二審ではごくたまに1時間の日もありますが、ほとんど15分で0の日も2日あり、「休憩時間」について厳格に判断するか否かが分かれ道となっているようです。

また、二審では居酒屋という特殊性から労働時間の中に手待ち時間がある程度あることは認めながら、時間外労働だけではなく、休日も2日しかとれず疲労が蓄積していたこと、深夜時間帯の生活リズムができ始めた頃、昼間の店長会議などに出席させられ、自律神経のバランスがくずれたと考えられることなど、労働密度や労働の質にも言及しています。

一審に比べ、より丁寧に実情をみて判断しているのが二審ということになりそうです。

 

心筋梗塞を発症させる喫煙というリスクについても、一審ではかなり重要視していますが、二審では原告の喫煙歴をリスクファクターとしながらも、原告がまだ35歳と若く直前の健康診断でも異常がなく、遺伝的要因もないことから喫煙よりもむしろ前述の業務内容からくる心理的負荷が原因だと認定しています。

原告は1日20~40本喫煙していて、店舗内の更衣室兼倉庫で喫煙することがありましたが、店内でアルバイトだけで対応できない場合は直ちに対応しなくてはいけなかったことや、エリアマネージャーとの打ち合わせ中に喫煙するなどしていて、喫煙時間中も完全に労働から開放されていたわけではなく、国側が主張する喫煙時間が休憩時間とは認めず、手待時間だとしています。そのため、休憩時間の評価が大きく分かれたものと思われます。

 

二審では「休憩時間とは労働者が労働時間の途中において休息のため労働から完全に解放されている時間であり、単に実労働に従事していないというだけで、何かあれば即時に実労働につくことを要する場合は手待時間であって休憩時間とは言えない」と休憩時間についての定義を念押ししています。

このあたり、労務管理上注意しなければならない問題だなと思います。

それにしても、一審で認定された78時間余りの時間外労働も相当な過重労働だと思うのですが、裁判官によって随分過重労働に対する判断が分かれるものなんだなあと感じました。

〔管理人注〕二審の場合は「原告」ではなく「控訴人」とすべきですが、話をわかりやすくするため「原告」に統一して表記しました。

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