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おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる13年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

偽装請負最高裁判決雑感

先週、請負会社から大手家電メーカーに派遣され、いわゆる「偽装請負」状態で働かされていた男性が、この家電メーカーと雇用関係があるとして争った最高裁の判決があり、雇用関係はないとされて労働者側の敗訴となりました。

一審では労働者側敗訴、二審の大阪高裁では逆転して会社側に雇用責任があるとした判決が出て、会社側が上告して最高裁ではまた逆転して労働者側の敗訴という展開をたどりました。

この男性が偽装請負を内部告発した後の報復ともいえる業務を命じたことについてのみ、90万円の賠償が認められました。

まだ、新聞記事だけで実際の判決文などを読んでみないとわからないこともあるのですが、やはり裁判官によって随分違うんだなあということですね。

まずは、事件の概要ですが、労働者Yさんは2004年1月から請負会社に雇われ前述の家電メーカーの工場で働き始めます。

工場では家電メーカーの社員から直接指示を受けて働いていたため、独立した請負関係ではなく、派遣状態であり、いわゆる「偽装請負」の状態だと気がつき、「実態はこのメーカーに直接雇用されているのと同じ」と2005年4月に労働局に内部告発します。

その結果、8月に直接雇用されますが、「契約期間満了」を理由に2006年1月に雇用を打ち切られてしまいます。この直接雇用された期間は配置転換されます。単独の作業部屋に隔離されて他の社員と接触できずに単純作業に従事させられます。

雇止めされた後、Yさんは不当解雇だとして、従業員としての地位確認、慰謝料請求などを求めて提訴したのがこの事案です。

 

製造業への派遣は認められていませんでしたが、2004年に認められるようになり、当時は派遣後1年したら直接雇用しなければならない(現在は3年)という縛りがあったため、Yさんの場合も請負ではなく実態は派遣なのですから、本来ですと1年たったところで直接雇用されるべきだったわけです。

一審ではその点は認めながら、雇用契約は成立していないとしたのですが、高裁では、就労実態からみて請負会社との契約は違法な労働者供給であり、中間搾取で無効であり、家電メーカーと暗黙の雇用契約が成立していたとして、労働者側の言い分を認めました。

最高裁では、たとえ違法な労働者派遣でもそのことだけで雇用関係が否定されるものではなく、メーカー側との間に契約が成立しているとはいえないとして、また逆転してしまったのですね。

高裁では、請負会社との契約が公序良俗違反で無効と断じているのですが、最高裁では違法なことはしてるけど、無効とまではいえないとしたところが大きな分かれ目なのかなあと思います。社会的な影響を考えて多少ブレーキがかかったのでしょうか。

 

高裁の場合、メーカー工場で働いているという実態があるので、これを裏付けるのは「黙示の雇用契約」だとして、労働者側に理解を示す判決となっているのですが、最高裁ではそこまで踏み込んでいないようですね。

新聞の解説では、この請負会社の独立性が強く資本関係や人的関係もなかったため、そういうことがもしあればまた違った判断もあり得るとしています。

最高裁では「違法状態」を認めながら、「公序良俗違反」まではいっていないという判断なのでしょうか。今後、判決文などが専門誌等で明らかになると思いますので、是非見てみたいと思います。

 

高裁では、「中間搾取」と表現するなど、労働者側の実態を見つめ寄り添うような判断をしたと思いますが、最高裁では、労働者側からすれば雇われているのと同じと思っても、会社側は雇った覚えはないということで、双方合意の上で成立する「契約関係」ということを重要視したのかなあとも思います。

しかし、民法的な契約自由の原則という考え方のもとでは、労働者側は常に不利な立場に置かれてしまう。それはまずいということで各種の労働法ができているはずです。

労働者派遣法にも第1条の目的として「派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的とする」とあり、労働者の保護というのが労働法の大きな目的の一つであるはずです。

労働者の保護を図るためには、使用者側により厳格に各種労働法の遵守が求められなければならないはずだし、就労実態からグレーゾーン的なYさんの立場をはっきり「これは黒だからダメ」と言った高裁判決の方が、私としては労働法の精神にのっとっているように感じます。

最高裁判決はちょっとその点で鈍さを感じるのですが、何とか判決文を早く読みたいと思わせられるような判決でした。

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